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Q7:ナノアマンド®の持つ強い黒色に閉口しています。  黒色のためにダイヤモンドの特徴の一つである光学用途を検討することが出来ません。この色は何に由来しているのでしょう?脱色は不可能でしょうか?

A7:色は粒子表面に部分的黒鉛型炭素層があるためと考えられ、黒鉛型炭素はダイヤモンドよりも反応性が高いので、過酷な酸化処理によって脱色可能です。出来るだけ早い時期に、無色透明試作品の出荷に漕ぎ着けたいと願っています。

Q6:ナノアマンド®は現在開発用試薬としてかなり出まわっているようですが、価格が高すぎます。工業的用途が見つかったとしても、高コストが避けられなければ、開発はフラーレン型ナノ炭素と同じような壁に突き当たるのではないでしょうか?

A6:製造コストは、以下に示すように、原料・製造段階は、爆発装置を除いて、本来非常に安価と考えられます。精製段階では、解膠、仕上げにややコストがかかり、特に最終工程では防塵環境が必要となり、また仕上げ段階で動的光散乱装置、ゼータ電位測定装置、X線回折装置などを使うので、分析機器にかなりの投資が必要です。計算の詳細は省略しますが、労賃が最大のコスト要因になりそうです。まだ精製・仕上げ段階が確定していませんが、最終販売価格は、高純度無色透明品質で現在の価格よりも一桁、黒色低純度品で二桁低くなる見込みです。
原料 期限切れ軍事用火薬、コストは(−)
製造 爆発 火薬の爆発エネルギー利用
装置 鋼鉄製耐圧容器、単純構造
精製 煤除去 ローテク、試薬は濃硝酸
解膠 ビーズミリング装置、溶媒は水、DMSO、EtOH
仕上げ 脱色、超音波照射、遠心、ろ過、表面改質、分析

Q5:ナノアマンド®の物性定数が測定されていないようです。比重、着火温度、屈折率、誘電率、ヤング率などが、
  わからないと工業的応用に不便です。測定が遅れているのは何故ですか?

A5:A1でも触れたように、現時点ではナノアマンド®は未完成製品ですので、物性値の測定には未だ着手していません。無色透明で、表面構造が化学的に満足できる程度に制御され、ダイヤモンド炭素含量が到達可能純度の98%以内に入った時点で、標準物性を測定する予定です。

Q4:1,2年前に炭素ナノ粒子は生物に有害ではないかという風評が流れました。ナノアマンド®は大丈夫でしょうか?

A4:ナノ粒子全般の健康リスク、生体許容性については、現在世界工業先進国において、それぞれ公的機関による広範かつ厳正な実験的調査が行なわれていますので、その報告を待ちたいとおもいます。わが国ではNEDOの資金援助のもと、産業総合技術研究所が主体となって、大掛かりなナノ粒子社会受容性調査プロジェクトが進行中で、ナノアマンド®は平成20年度に調査が行なわれる予定になっています。ナノ炭素研究所では結果を完全公表する予定です。

ナノアマンド®については、既にアメリカDayton大学Dai教授によって詳細な生体許容性研究が行われ、細胞毒性は皆無、遺伝子毒性も確定できないほど弱いという結果が得られています。結果は以下の文献に公表されています:

1.“Differential biocompatibility of carbon nanotubes and nanodiamonds,” Schrand, A. M.; Dai, L.; Schlager, J. J.; Hussain, S. M.; Ōsawa, E. Diam. Rel. Mater. 2007, 16[12], 2118-2123.



2.“Are diamond nanoparticles cytotoxic?”, Schrand, A. M.; Huang, H.; Carlson, C.; Schlager, J. J.; Ōsawa, E.; Hussain, S. M.; Dai, L.; J. Phys. Chem. B. 2007, 111[1], 2-7.



3.“Cytotoxicity and genotoxity of carbon nanomaterials”, Schrand, A. M.; Johnson, J.; Dai, L.; Hussain, S. M.; Schlager, J. J.; Zhu, L.; Hong, Y.; Ōsawa, E. in Safety of Nanoparticles: From Manufacturing to Clinical Applications,Webster, T. (Ed.), Springer Verlag, xxx, in press.

Q3: ナノアマンド®は何の役に立ちますか?

A3:ナノダイヤモンド®分散体は、これまで未知だったので、用途も未知です。しかし、ナノテク素材の中で、もっとも興味深い一桁ナノの大きさを持つこと、ダイヤモンドは本来地球上で知られている物質中、工業材料として最高最良の性質を持つという事実などを考え合わせると、近来稀に見る優れた汎用素材になると期待されます。現在、用途を鋭意開拓中ですが、特許、論文などの裏ずけある有望用途を纏めると以下のようです。応用範囲の広さ、これまで見出された用途の多様性などを考えると、これから更に多くの用途が発見され、展開すると思われます.

ナノダイヤの形 応用分野 現状[文献]
分散粒子
(コロイド、
アエロゾル)
高速超精密研磨 CMP用砥粒 予備結果良好[1]
潤滑剤 低摩擦コーティング 予備結果良好[2]
組成物強化成分 Cu, Wを母材とする合金 予備結果良好[3,4]
低圧電子放出陰極 ディスプレイ、電子銃 未着手
CVD結晶核 NCD, UNCD薄膜 進展中[5ab]
蛍光発光素子 細胞イメージング 進展中[6]
ドラッグキャリヤー 細胞治療 未着手
表面誘導体 過フッ化物中間体 予備結果良好[2]
ナノ炭素原料 孤立ナノオニオン合成 予備結果良好[2]
触媒担体 インターカレーション型触媒 予備結果良好[7]
ナノマスキング ダイヤモンド系トランスデューサー表面エッチング 進展中[8a]
吸着媒 病原体別流行性疾患早期検査 予備結果良好[13]
電子デバイス N/MEMS、ヒートシンクなど 未着手[14]
ゲル 薬物キャリヤー ドラッグデリバリー 予備結果良好[9]
熱伝媒体 ヒートシンク 未着手
集合体 複合膜(LBL法) 非炎症性内臓移植用被膜 進展中[10]
SPS焼結 各種成型体 着手後中断[2]
直接コーティング 表面保護 未検討
オーディオ用コーン 未検討

[01]大澤映二、現代化学、平成19年12月号印刷中。

[02]E. Ōsawa, Pure & Appl. Chem. 投稿中。

[1]加藤照子ほか、型技術21, 56 (2006).

[2]未公開.

[3]V. Livramento, J. B. Correa, D. Nunes, P. A. Carvalho, H. Fernandes, C. Silva, K. Hanada, N. Shohoji, E. Ōsawa, 投稿中.

[4](a) V. Libramento、J. B. Correia, N. Shojoji, E. Ōsawa, Diam. Rel. Mater. 6, 202 (2007); (b) J. B. Correa, V. Libramento, N. Shohoji, E. Tresso, K. Yamamoto, K. Hanada, E. Ōsawa,

[5].(a) O. A. Williams, O. Douheret, M. Daenen, K. Haenen, E. Ōsawa, M. Takahashi, Chem. Phys. Lett. 445, 255 (2007); (b) O. A. Williams, M. Nesladek, M. Daenen, S. Michaelson, O. Ternyak, A. Hoffman, E. Ōsawa, K. Haenen, R. B. Jackman, D. M. Gruen, Diam. Rel. Mater.投稿中.

[6]Y. Colpin, A. Swan, A. V. Zvyagin, T. Plakhotnik, Opt. Lett. 31, 625 (2006).

[7]A. E. Alexenski, M. V. Baidakova, M. A. Yagovkina, V. I. Siklitski, A. Ya. Vul’, H. Naramoto, V. I. Lavrentiev, ICNDST-9, Abst. No. 173 (2004).

[8]H. Huang, E. Pierstorff, E. Ōsawa, D. Ho, Nano Lett. (2007), doi:10,1021/nl075121o. [8a] N. Yang, H. Uetuska, H. Watanabe, J. Yu, E. Osawa, C. E. Nebel, 投稿準備中.

[9]H. Huang, E. Pierstorff, E. Ōsawa, D. Ho, 投稿中.

[10]E. Oda, K. Ameyama, S. Yamaguchi, Mater. Sci. Forum 503-504, 573 (2006).

[11] A. Krüger, F. Kataoka, M. Ozawa, A. Aksenskii, Y. A. Vul’, Y. Fjino, A. Suzuki, E. Ōsawa, Carbon 43, 1722 (2005).

[12] M. Ozawa, M. Inakuma, M. Takahashi, F. Kataoka, A. Krüger, E. Ōsawa, Adv. Mater. 19, 1201 (2007).

[13] “Nanocarbon materials for noninstrumental immunochemical diagnosticums,” T.Fujimura, I.V.Shugalei, N.A. Zhdanova, A.M.Ivanov, Е. Ōsawa, N.N.Rozhkova, V.V.Sokolova, V.Yu.Dolmatov, T.M.Ilyushina, Presented before EN-NANO Nagano Conference, June 13-18, 2008, Nagano, Japan.

[14]「ダイヤモンドエレクトロニクスの最前線」藤森直治、鹿田真一編集、シーエムシー出版準備中.

Q2:ナノアマンド®は、従来から販売されていたクラスターダイヤモンド、納米金剛石超微粉末などのナノダイヤモンド®
  商品と何処が違いますか?

A2両者共に同じ軍事用火薬Composition Bの爆轟法によって作られますが、クラスターダイヤモンドは、粗製生物から、副生物の煤を熱硝酸で酸化して除くことによって得られる一次生成物で、60-200 nmに亙って広い粒度分布を示す、多結晶系です。粉末X線回折強度から求められる干渉性散乱領域(大きさ4-5 nm)に相当する単結晶一次粒子(grain)が、無定形炭素から成るgrain boundaryによって疎結合して出来ている凝膠混合物と考えられます。
ナノアマンド®は、クラスターダイヤモンドを、ビーズミリングによって更に解膠して、単結晶一次粒子を取り出したもので、二次生成物に相当します。小角X線散乱、動的光散乱、TEMイメージの画像処理などによって得た粒径の平均値4.6±0.6 nmは上記干渉性散乱領域の大きさと一致することから、立方晶ダイヤモンド単結晶一次粒子に相当するとさられています。ただし、粒子表面は未処理で、含酸素官能基群、部分黒鉛層などを含む複雑な構造をもち、その意味で未完成品です。標品となるような最終生成物は、ナノアマンド®の表面を再構築し、例えばすべてC-H結合で覆った、均一な表面を持つナノダイヤモンド粒子となる予定ですが、未知です。予備的な分子モデリングによると、ナノアマンド®一粒子当たりの原子数はおよそ5000、表面原子の割合は約20%と推定されています。