ナノ炭素研ニュース

    2.6nmダイヤモンド分散粒子の定常的生産が可能となった

    本HPの今年1月号ニュース欄で、爆轟法ナノダイヤモンドの平均直径が2.6±0.5nmに決まったことを報告したが、この先で研究がしばらく躓いた。というのは、この大きさに揃った製品を再現性よく製造することが出来なかった。具体的には、2.6nmの2倍に近い直径4~5nmの粒子ばかりが頻繁に出来た。つまり、2.6nmの粒子が一旦は出来るが、その後速やかに2量体をつくるらしい。ミリング解砕の後で、軽度の凝集が起きるような操作をしているらしい。そこで、考えられるすべての要因を根気強く虱潰しに検討した結果、それまで無害な操作と考えて見逃していた、「水による希釈」操作が犯人であることが解った。
    ビーズミリング終了後に回流回路の内部を水で良く洗うが、その際に洗液が相当黒く着色して、かなりの量のナノダイヤが含まれていることが明らかなので、回流水本体のナノダイヤコロイド水溶液に加えて、必要とあればロータリーエバポレーターで濃縮し、さらに冷蔵、棉濾過、遠心処理、クロマトなどの精製処理後、ナノダイヤコロイド水溶液の商品濃度2.5%まで水を添加して希釈していた。ナノダイヤ凝膠体の解砕後に、水による希釈を2回も行っていたことになる。
    ナノダイヤ水溶液に水を加えて希釈し、濃度を薄めると軽度の凝集が起きることは、以前から気づいていた。他社の製品にも同様な現象が認められたので、ナノ粒子に共通した現象であろうと考えて、取り敢えず「希釈凝集」と名付けておいた。化学では、溶液の濃度を下げると、溶質分子間の平均距離が増すから、衝突による会合が起き難くなり、単分散が達成されが、ナノ粒子ではその逆になる!非常に不思議な現象である。原因はまだ良く解っていないが、一般に希釈凝集の程度は小さく、特にわが社の製品は凝集しにくいので、あまり重視していなかった。ところが、3nm以下の平均直径をもつ粒子が出来てみると、表面活性が高くなるので、希釈凝集が顕著に起きたのであろう。
     注意深く解砕条件を保持し、解砕終了後は水を一切添加しないようにしたら、2.6nm粒子が定常的に取れるようになった。現在の解砕条件では、凝膠体原料スラリーの初期濃度は4%なので、製品コロイド分散溶液の濃度も4%である。それなら、4%以外の濃度のコロイド溶液をどのようにして作るかという問題が発生する。上で、希釈凝集の原因が良く解っていない、と述べたが、これと逆の現象「濃縮分散」、すなわちナノダイヤ分散水溶液は濃縮するほど、分散が安定化することも知られている。濃縮分散はコロイド結晶と関連付けて、説明できそうである。とすると、希釈凝集も説明できそうである。

    NanoAmandoをCVD種付けに使用する際の重要なお知らせ

    NanoAmandoの粒度は、最初に出来る製品であるにコロイド水溶液において最小となり、以後処理を重ねるにつれて、大きくなる傾向があるので、コロイド水溶液を使うことをお勧めする。しかし、商品濃度2.5%は高すぎるので、使用直前に水で薄め、0.2%水溶液を作って使用する。所定量(a ml)の2.5%コロイド溶液に、磁気攪拌、窒素流入下,純水(11.5a ml)を滴下ロートからゆっくりと滴下する。この際埃が入らないよう、覆いを被せるなどして注意する。希釈溶液をただちに使用して、残りは棄てる。その理由は、0.2%コロイド溶液を作り置きすると、希釈凝集現象によって、数時間でナノダイヤが数10nmまで凝集し、結晶成長種としては劣化するからである。濃度1%以上では、「希釈凝集」は起きない(濃縮分散現象)。


    爆轟法ナノダイヤモンド基本粒子の大きさは2.6±0.5nmに決定!

     今のところ、事実上唯一の量産可能な人工ナノダイヤモンドは、「爆轟」という変わった方法で製造される。この方法は1963年から知られているにも拘わらず、基本粒子の大きさがなかなか決められなかった。ダイヤモンド結晶は等軸晶系なので、本質的に擬球形であり、直径が確定すれば表面積を比較的正確に推定することができ、一番重要な表面由来の性質も見当がつくので、重要な問題である。
     我々が初めて基本粒子を取り出したと思ったのは2005年であるが、DLS測定値は4.8±0.8nmであった。しかしDLS法は精度が悪いので、4〜5nmと表現していた。この値を使う人は今でも多いが、取り出し技術が進むにつれて、爆轟法ナノダイヤの直径が小さくなり、数年前にとうとう最小値2.6±0.5nmを示した。もちろん、取り出すときに壊しているわけではなく、直径は爆轟で生成した時に決まるが、ナノ粒子の常として凝集性が著しく高く、特に解砕操作で最後まで残る2量体の結合が強く、これを完全に切断し尽くして100%単量体(つまり基本粒子)にしない限り、観測値の平均は、真の直径よりも大きくなる。つまり、ひたすら最小値を目指せば、真の値に到達すると考えられる。
     2.6nmという値(もちろんナノ粒子だから分布を持つ)が本当に正しいだろうか?傍証が必要である。第一の証拠は、思いもかけないところから現れた。ナノダイヤモンドに関して信憑性の高い学術論文が始めて発表されたのは、先の爆轟法発見よりもかなり遅く、1989年のことでR. N. Lewisら(シカゴ大学)の業績である。この時は、太陽系誕生以前から宇宙を漂っていたとされる有名なAllende隕石から取り出して、TEM写真から直接大きさを求めたので、信頼性が高い。これがなんと2.6nmで、我々がDLSで求めていた値と完全に一致した!ただし、これは完璧な証明にはならない。隕石ナノダイヤと爆轟法ナノダイヤの関連が不明だからである。
     とすると、変な言い方だが、最も確からしい傍証とは、2.6±0.5nmの範囲内に入る大きさのナノダイヤ粒子を高い確率で作り出し、これよりも小さなナノダイヤは出来ないことを実験的に証明すれば良い。最近この初期段階に成功した。知的財産権の関係で、今全容を明かすことは出来ないが、時期を見て公表したい。この値から、爆轟法ナノダイヤモンド基本粒子が非常に有用であることを容易に窺うことが出来る。例えば球近似で求めた表面積は4000/gとなり、活性炭の世界記録に匹敵する。直径4〜5nmの頃は、殆どが2量体であり、有効表面積は、完全分散体の8分の1程度であっただろう。


    ナノダイヤに関する研究論文掲載・特許成立のお知らせ

    No. 352. “Carbon structure in nanodiamonds elucidated from Raman spectroscopy,” Korepanov, V.; Hamaguchi, H.; Ōsawa, E.; Ermolenkov, V.; Lednev, I. K.; Etzold, B. J. M.; Levinson, O.; Zousman, B.; Epperla, C. P.; Chang, H.-C., Carbon, 2017, 121, 322-329.

    No. 351. “Unusual water hydrogen-bond network around hydrogenated nanodiamond,” Petit, T.; Puskar, L.; Dorenko, T.; Choudhury, S.; Richter, E.; Burikov, S.; Laptinskiy, K.; Brustowski, Q.; Schade Ulrich, Yuzawa, H.; Nagasaka, M.; Kosugi, N.; Venerosy, A.; Girard, H.; Arnault, J.-C.; Ōsawa, E.; Nunn, N.; Shenderova, O.; Aziz, E. F. Accepted for publication J. Phys. Chem. C, in press.

    No. 350. “Biocompatibility Assessment of Detonation Nanodiamond in Non-Human Primates and Rats Using Histologic, Hematologic and Urine Analysis,” Moore, L.; Yang, J.; Lan, T. T. H. ; Ōsawa, E.; Lee, D.-K.; Johnson, W. D.; Xi, J.; Chow, E. K.-H.; Ho, D. ACS Nano 2016, 10, 7385-7400.


    ナノダイヤ開発に関する解説掲載のお知らせ

    No. 215. 「2.6nmダイヤモンドの再発見と開発」大澤映二、NEW DIAMOND2017、33、No.4、 p.11-15.
    No. 213. 「炸薬爆轟によるナノダイヤモンド生成と応用」大澤映二、粉体技術、2017、9No.7、577-583.




    爆轟反応の問題点

    爆轟反応の問題点(pdf)

    新製品「煙霧状無水ダイヤモンド超微細粉末(Fumed diamond)」発売予告

    新製品「煙霧状無水ダイヤモンド超微細粉末(Fumed diamond)」発売予告(pdf)